2024/06/26
原状回復工事とは?区分による違いや流れ、期間や費用などについて詳しく解説
現在のオフィスから退去するときには、原状回復工事が必要になります。
しかし、オフィスの退去が初めての方だと、原状回復工事の詳細がわからず、混乱することもあるでしょう。
ここでは、原状回復工事という言葉の意味から、区分の違い、原状回復工事の範囲や流れ、費用やポイントなどまで、詳しく解説します。
目次
原状回復工事とは?
まずは、原状回復工事という言葉の意味や、類似した単語との違いについて学んでみましょう。
原状回復工事の意味
原状回復工事とは、建物に入居したときと同様の状態に戻す工事のことです。
オーナーが新しいテナントを迎え入れるために、現在のテナントが建物から退去する際には、必ずおこなわなければなりません。
なお、対処しなければならない範囲は、契約内容やテナントが手を入れた範囲などによって変わります。
共用部分から広く対処しなければいけないことも、自分たちがテナントとして入っている専有部分を中心におこなうだけで良いこともあります。
現状回復や現状復帰などとの違い
原状回復と似た言葉には、「現状回復」や「現状復帰」などがあります。
現状回復の場合は、誤用です。
原状回復が「元の状態(原状)へ戻すこと」を意味するのに対し、現状回復は「今の状態(現状)に戻すこと」の意味になってしまうためです。
一方で、「原状復帰」は誤用ではありません。
原状回復とほぼ同じ意味を持ちますが、建設業界用語のため、使用するシーンが異なります。
原状回復は賃貸借のシーンで使われる言葉で、原状復帰は被災した建物を元通りにするシーンで主に使われます。
原状回復の区分による違い
原状回復工事は、工事区分が3つに分かれています。
それぞれの違いを見ていきましょう。
A工事
A工事とは、オーナーが業者の選定から費用までを負担する原状回復工事のことです。
例えば、ビルのエントランスや外壁、トイレや廊下といった共用部分、建物の骨組みや給排水設備、ガスメーターといった基礎部分に関しては、A工事に該当することがあります。
これらをオーナーが負担するのは、収益物件を運営するオーナーには修繕義務があり、物件の不具合はオーナーが修繕しなければならないためです。
テナントは基本的に何もする必要はありませんが、テナント側が共用部分を破損しているといった場合は、修繕費用を請求されることがあります。
B工事
B工事は、オーナーが業者の選定をおこない、テナントが費用を負担する原状回復工事のことです。
テナントの専有部分のうち、防災設備や空調設備、給排水設備など、建物の基礎に影響を与える変更があった場合はB工事となり、オーナーから原状回復工事するよう求められることがあります。
業者の選定はオーナーがおこないますが、費用はテナント側の負担になるのがB工事の特徴です。
また、業者がオーナーの依頼で、A工事からB工事までの見積もりをまとめて出しているケースがあります。
このケースでは、共用部分に関するA工事の費用の一部まで、B工事の見積もりに含まれていることがあります。
不要な部分の費用負担までさせられないように、注意が必要です。
C工事
C工事は、テナントが業者の選定から費用までを負担する原状回復工事のことです。
テナントが専有部分に設置した、建物全体に影響を与えない箇所に対しておこなうものは、C工事に該当します。
例えば、間仕切りや什器などの内装の撤去、電話線、インターネット回線などの配線撤去といったものが該当します。
損傷がひどい場合は、壁紙や天井、床の張り替えもおこない、元々置いてあった家具を撤去している場合には、再設置などをおこなうこともあるはずです。
そこまで大規模な工事にはなりませんが、A工事からC工事まで必要なケースもあります。
複数の業者を入れるのが難しい場合は、オーナーが選定した業者にまとめてA~C工事を依頼することもあるでしょう。
そのケースもB工事と同様に、他の工事の費用が見積もりに含まれていないか注意して観察してみてください。
原状回復工事をおこなう範囲
原状回復工事の範囲は、契約内容によって異なりますが、主な範囲は下記の通りです。
- ・間仕切りやLGSなど、造作物の撤去や解体
- ・電話回線やLANケーブル、什器や備品などの撤去
- ・防災設備や空調機器などの天井設備の移動や交換
- ・天井ボードの張り替え、補修、塗装、クリーニング
- ・床材やカーペットの張り替え、塗装、クリーニング
- ・壁紙などの張り替え、塗装、クリーニング
- ・ドアや窓枠などの建具や照明器具の交換、補修、塗装、クリーニング
上記の内容は、B工事やC工事の場合を想定しています。
共用部分にまで手を加える場合には、より範囲が広がることがあります。
原状回復工事の期間
原状回復工事にかかる期間は、坪数や工事内容で異なります。
坪数 | 工事期間の目安 |
100坪未満 | 2週間~1ヶ月 |
100坪以上 | 1ヶ月~2ヶ月 |
100坪未満であれば、原状回復工事の期間は2週間~1ヶ月が目安です。
工事内容が少なければ、1週間で終わるようなこともあります。
100坪以上であれば、工事内容が少ない場合でも、1ヶ月ほどは見積もってください。
工事内容が複雑であれば、1ヶ月半や2ヶ月など、それ以上の期間が必要になることもあります。
また、工事内容が少ない場合でも、さまざまな理由から、期間が延長されることがあります。
例えば、業者が繁忙期に差し掛かっていて人員確保が難しいときや、オーナーに工事の時間帯や曜日が指定されていて作業時間の確保が難しいときなどです。
原状回復工事を開始するタイミング
原状回復工事を開始するタイミングは、オフィスの場合なら契約終了日の2~3ヶ月前が目安です。
オフィスでは、契約期間終了日までに原状回復工事を終えるのが一般的のためです。
アパートやマンションは、契約期間終了後に原状回復工事を開始するため、そちらと同様に考えていたという方は注意しましょう。
同じように対応してしまうと、契約期間終了までに間に合わず、トラブルに発展することもあり得ます。
例えば、オーナーに迷惑がかかり、オーバーした期間分のテナント料を請求されるといったトラブルが考えられます。
また、工事期間が坪数や工事内容に応じて変わることも、原状回復工事終了後に追加工事を求められる可能性もあるでしょう。
そのため、契約期間終了日の2~3ヶ月前には工事が開始できるように、余裕を持ったスケジュールを組むことが大切です。
原状回復工事の流れ
原状回復工事の流れは、大きく4つのステップに分けることができます。
それぞれの流れを見てみましょう。
賃貸借契約書で必要な事柄を確認
最初にすべきは、賃貸借契約書の確認です。
賃貸借契約書には、原状回復工事の範囲や工事がおこなえる時間帯など、さまざまな重要事項が記載されているためです。
また、契約期間終了前にテナント側の理由で退去する場合は、解約予告が必要になります。
解約予告は、契約終了の3~6ヶ月前に通知が一般的ですが、賃貸借契約書の内容によって異なります。
賃貸借契約書には、解約予告を何日までにおこなえば良いかといった解約予告期間についても書かれているため、併せて確認しておくとスムーズです。
業者の選定や現地調査
次におこなうのが、業者への現地調査依頼です。
現地調査とは、業者が建物の内部に入り、原状回復工事の範囲や、傷や汚れの具合などを確認、調査するものを指します。
自社の担当者が立ち合い、賃貸借契約書に記載された範囲を確認しながらおこないましょう。
B工事のように業者が指定されている場合は、その業者に現地調査を依頼するため、業者の選定は不要です。
業者がオーナーに指定されていないC工事の場合は、自分で業者の選定をおこなって現地調査を依頼するという流れになります。
見積書の確認
現地調査をおこなったら、その業者に見積書を作成してもらいましょう。
見積書は、どのような工事をおこなうのか、その金額はいくらかといった内容や内訳について書かれています。
その内容や費用については、詳しく確認することが大切です。
疑問点や不明点がある場合は、確認しておかないと、認識の相違があって不要な工事が含まれているといったトラブルも起こり得ます。
場合によっては何度かやり取りをし、問題がありそうなら別の業者に依頼することも検討すると良いでしょう。
原状回復工事の発注、工事の開始
見積書について問題がなければ、B工事やC工事などの契約を結び、原状回復工事の発注へと進みます。
その際、自社の担当者は、工事期間中の中間検査を依頼しておくと良いでしょう。
中間検査では、工事開始後に原状回復工事がスケジュール通りに進んでいるか、問題ないかといった、進捗確認ができます。
原状回復工事を終えたら、テナントをオーナーに引き渡して完了です。
ただし、原状回復工事がしっかりおこなわれたかオーナーが確認し、不備があれば追加工事を依頼してくる…といったケースもあり得ます。
契約期間内に終わらせるためにも、追加工事に備えて、早めに発注することが大切です。
原状回復工事の費用相場
原状回復工事の費用は、主にオフィスの坪数によって異なります。
坪数に応じて坪単価が増えるため、広いオフィスであればその分費用は多めにかかってしまうことに注意しましょう。
坪数 | 坪単価の目安 |
小規模オフィス | 2~6万円 |
50~100坪以上のオフィス | 10~20万円 |
小規模なオフィスなら、坪単価2~6万円で抑えられることがあります。
しかし、50坪や100坪を超えるようなオフィスともなれば、坪単価10~20万円といった費用がかかることも珍しくありません。
ただし、ざっくり坪数で計算された費用相場のため、現地調査で原状回復工事の範囲や内容が判明すれば、変わることもあります。
また、施工時期が繁忙期か否かで変わることもあります。
さまざまな要素が影響するため、見積書で実際に確認することが大切です。
原状回復工事は安く抑えられる?
原状回復工事を安く抑えるために、3つのポイントを押さえましょう。
区分変更が可能か交渉する
費用を抑えたいときには、工事の区分がB工事であれば、C工事へ変更できないかオーナーに交渉するのも一つの手です。
B工事ではオーナー指定の業者を使いますが、その業者が適正価格を示していないケースがあるためです。
また、オーナーに認識相違があり、原状回復工事の範囲が広すぎるケースもあるでしょう。
オーナーがその業者に対して思い入れがない場合や、C工事の対応で事足りる場合などには、交渉の余地があります。
B工事からC工事に変更できれば、適正価格の業者に依頼できたり、原状回復工事の範囲が縮小したりするため、コストダウンにつながります。
繁忙期を避ける
原状回復工事をおこなう業者の繁忙期を避けて依頼することも大切です。
例えば、新年度に向けてテナントが準備を始める1~4月は、業者に依頼が殺到する繁忙期に当たります。
決算期の9月や12月付近も、依頼が集中しやすい時期です。
業者によっては、ゴールデンウィークやシルバーウィークなどの大型連休も、繁忙期に当たることがあります。
その時期に原状回復工事を依頼しようとすると、人員確保の難しさから待たされるか、割り増し料金で対応ということがあり得ます。
業者によって繁忙期は異なりますが、なるべくこれらの繫忙期を避けると良いでしょう。
また、業者の予定が埋まる前に、早めに依頼することが大切です。
見積書が適切かチェックする
業者の見積もりが適切なものかをしっかりチェックすることも大切です。
見積もりには、不要な作業が含まれていたり、作業がアップグレードされていたりということがあるためです。
また、前述の通り、A工事についてはオーナーが費用を負担します。
しかし、一つの業者に複数の工事を任せると、A工事の費用の一部が見積もりに含まれてしまうといったことがあり得ます。
見積書の内容が正確であることはもちろん、自社にとって損がないような内容かといったことを確認しましょう。
原状回復工事のポイント
原状回復工事を、トラブルなくスムーズに進めるために、3つのポイントがあります。
それぞれ見ていきましょう。
重要項目はオーナーに確認を取る
重要な項目に関しては、オーナーに確認することを忘れないようにしましょう。
例えば、「原状回復工事の範囲はどこからどこまでか?」を自己判断するのは、リスクがあります。
誤って共用部分に原状回復工事をおこなってしまうことや、必要な部分に原状回復工事をおこなえないことが考えられるためです。
オーナーと認識をすり合わせておくことで、原状回復工事が終わった後になって、オーナーから追加工事をしてほしいと頼まれるようなトラブルを防げます。
なお、ビルのオーナーや不動産管理会社次第で、原状回復工事の進め方もかなり違いがあります。
認識の相違があると揉めることもあるので、できる限り確認を挟む意識を持つことが大切です。
原状回復工事ができる曜日や時間帯をチェックする
オーナーはもちろん、近隣のテナントとのトラブルが発生しないように、原状回復工事の時間帯や曜日は必ず確認すると良いでしょう。
例えば、塗装をすればニオイがあり、作業によってはそれなりの大きい音が出ます。
そのため、作業可能な曜日や時間帯が限定されていることがあります。
それらを確認しない内に原状回復工事に入ってしまうと、オーナーや近隣のテナントに迷惑が掛かり、金銭的なトラブルにも発展しかねません。
また、業者が当初のスケジュール通り作業できず、原状回復工事が遅れてしまう事態にもなってしまいます。
徹底したスケジュール管理をおこなう
スケジュール管理は、原状回復工事で重視したい項目の一つです。
スケジュールが遅れれば、遅れた日数分のテナント料を請求されるといった、金銭トラブルに発展する恐れがあるためです。
また、オフィス移転をする場合は、業務が滞らないように、新オフィスとの契約や移転先の工事も進めておく必要があります。
原状回復工事が始まる頃には、現在のオフィスの退去が済み、新オフィスで業務をスタートできるような状態がベストです。
さらに、テナント側の都合で契約期間終了前に中途解約する場合は、定められた期間内に解約予告もおこなう必要があります。
スムーズにオフィス移転が終えられるように、必要な事柄が何かを整理しながら、スケジュール管理に当たってみてください。
原状回復工事はTOMITA株式会社にご依頼ください
この記事では、原状回復工事という言葉の意味から、区分の違い、流れや費用、ポイントなど、詳しく解説しました。
原状回復工事は区分が分かれており、そのうちテナントが対応しなければならないのは、B工事とC工事です。
原状回復工事をスムーズに進めるためにも、重要項目の確認は欠かさず、スケジューリングを徹底しましょう。
TOMITA株式会社は、設計デザインから施工まで一括でおこなっており、オーダー家具製作や壁面緑化、原状回復工事まで幅広く対応しています。
飲食店や美容院など、テナント様の閉店時には、専有部分への原状回復工事(C工事)をおこなってきた実績があります。
また、ビルを保有するオーナー側でもあるため、共用部分への原状回復工事(A工事)もおこなってきました。
内装のリノベーションやリフォームをメインに承っており、原状回復工事まで視野に入れた内装計画も提案可能です。
内装のリノベーションやリフォーム、原状回復工事についてお悩みの方は、ぜひ一度TOMITA株式会社にお問い合わせください。